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渡邉哲也の今世界で何が起きているのか

渡邉哲也(作家・経済評論家)

渡邉哲也

第953回 モラルハザード

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                   渡邉哲也の今世界で何が起きているのか

                               2015/06/25 

               第953回 モラルハザード

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★ギリシャ問題 予想どおり交渉一日目は決裂に終わった。交渉を継続するとしている
が、その先行きは全く見えない状況になっている。債権者側の条件の主なものとしては
1.年金の受給年齢引上げ(段階的に67歳まで)2.消費税軽減税率撤廃 すべて2
3%ということになるのだが、これはシリザが選挙で提示した年金の受給条件を元に戻
すというものとは対極のものである。2012年の救済合意により、ギリシャの年金は
引き下げられ、50歳から受給できるのが当たり前であった年金の受給年齢は引き上げ
られた。また、公務員のリストラが行われ、公的企業の売却も予定されていた。しかし、
 このような緊縮政策に対する国民の不満は強く、それが極左政権への政権交代を導い
たといえる。

 そして、この政権交代の最大の問題点は、モラルハザードの悪化である。もともと、
モラルが低く産業基盤が脆弱であったギリシャであるが、極左政権の誕生でこれがさら
に悪化してしまったことにある。『借りたものは返さなくてはいけない』これは当たり
前の道理であるが、これが通用しないのがギリシャであり、『働いたら負け、返したら
負け』の社会が更にひどい状態になってしまったのである。

 2011年 私がギリシャに行った時もそれなりにひどかったが、これが更に悪い方
向に進んでいるといえる。 アテネの空港で荷物が回転台に出てこない。クレームを付
けてもまともに対応しようとしない。結果的に見つからなかったわけであるが、その保
証もまともにしようとしない。また、空港の片隅には大量のロストバゲージが山積みに
なっており、その中にないかと聞く有り様 ギリシャ人経営の商店には商品がなく、タ
バコも一銘柄、清涼飲料水も数銘柄しか置いていない。

 外貨(海外資金)が潤沢に手に入るミコノスなど外国人観光客向けの島や施設は他の
欧州諸国と変わらないが、それ以外の島などは開発中のリゾート案件が雨ざらしになっ
ていたり、島中建設中の建物、売り物件だらけであった。バブルの爪痕といえばそのと
おりなのだが、問題はその後の対応といえるのであろう。また、港は役人とつるんだ得
体のしれない人たちが支配しており、ヨットの係留には役人への支払いと別にチップを
要求される有り様であった。そして、その役人たちも給料が払われていないので、係留
代を給料代わりに貰っているというのである。

 シリザは選挙の公約と行政対応で低所得者向けの差し押さえをさせないとしており、
これが低所得者層の債務不払いを正当化させてしまっている。また、地方の役人などへ
は給与がまともに支払われておらず、役人は税や料金を私物化している。そして、ギリ
シャの場合、産業基盤が脆弱であるため、国や公営企業、地方公共団体が最大の消費者
であるわけであるが、ここからの企業への支払いが停止しているため、企業も取引先や
従業員への支払いができない状態になってしまっているわけである。そして、これを手
形のジャンプ(書き換え)でごまかしているのが現状であり、税の申告と納税が殆ど行
われない状況になりつつあるようである。

 問題はこのような状態の国をどのように再建するかとここからどのように回収するか
であるが、その先行きは不透明であり、方策はないに等しい。シリザは、国民に金を配
り、投資を活性化できれば、消費が拡大し、それが経済が回復させプライマリーバラン
スが改善されるとしているわけであるが、モラルハザードが悪化しているギリシャにこ
れが望めるとは私は思えない。

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…(記事全文3,203文字)
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