□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2018月5月6日第332号 ■ ============================================================= 在韓米軍の縮小はあるのか、ないのか、それが問題だ ============================================================= 米紙ニューヨークタイムズが3日、トランプ大統領は在韓米軍の縮小を国防総省に指示したと報じた。 しかし、すかさず国防総省はこの報道を否定した。 そしてボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)も4日、訪米中の韓国大統領府高官に在韓米軍の縮小を否定した。 どちらが本当か。 それが問題だ。 なぜなら在韓米軍の縮小有無は、在日米軍縮小と無関係ではないからだ。 朝鮮戦争が終れば韓国に米軍は不要になる。 誰もがそう思う。 私もそう思う。 そして米朝首脳会談で朝鮮戦争が終結する事はほぼ確実だ。 だから、在韓米軍縮小は当然の成り行きのように思える。 ところがである。 興味深い事に、韓国も北朝鮮もそれを強く求めていない。 韓国が米朝首脳会談の成功に配慮して、米国を刺激しないように在韓米軍の縮小をいま性急に求めないのはわかる。 しかし、私が注目したのは、金正恩委員長が訪中した時の報道で、中国は在韓米軍の縮小を求めたが金正恩委員長は必ずしもそのことにこだわらなかったと一部報道が報じていた事だ。 なぜ北朝鮮までもが在韓米軍の縮小に熱心でないのか。 その一方で中国はなぜ在韓米軍の縮小を北朝鮮に迫ったのか。 その答えを今日の朝日新聞の記事の中に見つけた。 「・・・正恩氏は、極秘に訪朝したポンぺオ米中央情報局長官(現国務長官)や文在寅韓国大統領との会談で、中国が望む在韓米軍の撤退は求めなかった。米朝関係筋の一人は、『中国と米国を競わせて漁夫の利を得るのが北朝鮮の戦略だ』と語った」 なるほど。 北朝鮮にとって、中国の軍事的庇護は、米国からの体制保証を取り付けるためには有効なカードだ。 その一方で、在韓米軍は、中国の軍事的支配に対するけん制カードにもなるのだ。 そして中国の軍事的脅威をけん制するという意味では、文在寅大統領もまた、在韓米軍の意義を認めているに違いない。 そうなのだ。 もはや在韓米軍は朝鮮戦争の為だけにあるのではないのだ。 朝鮮戦争が終わっても、今度は中国の脅威をけん制する為に、韓国も北朝鮮も在韓米軍の利用価値を認めているということではないのか。 それはあたかも安保条約が冷戦後もその性格を変えて日本にとって必要であるとみなされるのと同じだ。 言い換えれば、中国が米朝首脳会談に関心を持つ理由は、決して北朝鮮のための体制保証だけではない。 極東における米国との軍事覇権争いの為だ。 おりから米国と中国は、貿易問題はもとより、南シナ海や台湾をめぐり軍事的対立が表面化しつつある。 米朝首脳会談の隠れた議題は、極東の安全保障をめぐる米中のせめぎ合いである。 米朝韓国の三か国会議ではなく、中国を入れた4カ国会議になるだろう(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)