□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月14日発行 第103号 ■ ============================================================= 中国は「反イスラム」だという西山太吉氏の慧眼 ============================================================== おなじく「九条の会・さいたま」の講演録をもう一つ紹介したい。 それは元毎日新聞記者である西山太吉氏の「日米安保と沖縄の真実― 打ち破られた密約の闇」についての講演である。 戦後の日米関係史がここまで密約化した原因は1960年の安保や 1972年の沖縄返還の過程で、政治主導であるはずの対米外交に 官僚機構が入ってきたからだ、官僚特有の屁理屈と情報操作が幅をきかせる ようになったからだ、その典型が「抑止力」論だ、とする西山氏の 指摘は鋭い。 しかし私がこのメルマガで指摘したいのはそのことではない。 「米・中は『反イスラム』という共通点もある。もはや敵同士ではない のです」 と西山氏が述べているところである(講演録冊子25頁)。 米中関係は経済関係で相互依存を深めている。 少なくとも近い将来においては米中が敵対関係になる可能性は少ない。 これは、いまでは衆目の一致するところだろう。 しかし私はかねてからそれ以外に米中を結びつける隠れたテーマがある と考えてきた。 それは「テロとの戦い」についての利害一致だ。 もし中国が、米国にとっていまや安全保障上の最大の脅威である「テロ との戦い」において協力的である限り、米国は中国との軍事的関係を損ねる ようなことはしない。 それは逆に中国が米国の「テロ」支援に回る事を考えれば容易に理解できる。 米国にとって中国がイランのようになるのは悪夢なのだ。 実際のところ中国は米国の「テロとの戦い」に協力的だ。 米中首脳会議でも「テロとの戦い」で一致している。 それは中国自身が国内に少数民族問題を抱え、その抵抗を抑え込むという 共通課題を抱えているからだけではない。 西山太吉氏が喝破したようにもし中国が「反イスラム」であるとしたら、 中東和平問題についても米国の側につきやすい。 米国にとって、反米、反イスラエルのアラブ武装抵抗組織との戦いに中国が 味方してくれるならこれほど心強い事はない。 「米・中は反イスラムという共通点がある」と断じた西山太吉氏の言葉は、 今度のエジプトの市民革命に対する中国の反応が妙に抑制されたものである 、という事にも見事に符合する。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)