━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 渡邉哲也の今世界で何が起きているのか 2015/10/15 第1027回 利上げ観測の後退 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★中国経済の減速と資源安そして、利上げを見込んだドル高を受けて、米国の経済指標が冴えない状況になっています。これを受けて利上げ観測が後退し始めています。雇用統計は改善されているものの、物価目標との乖離が進むとの見方が強まり、これも利上げに逆風になっています。これを受けて為替も円高方向に進んでおり、株価も冴えない状況が続いています。問題は中長期的に見ても、明るい材料が枯渇していることであり、世界的に政治的にも経済的にも不安定要素が増加傾向にあることなのだと思います。当然、このような状況では企業の設備投資などが進む状況にはなく、生産活動も停滞します。これを改善するには消費税の増税延期など思い切った政策が必要なのでしょう。 ★台湾の話 台北の不動産バブルが弾けた模様です。昨年までは、ビルの建て替え工事がいたるところで行われ、市内中心部の億ションの新規分譲などが話題になっていましたが、出来上がった真新しいビルのテナントにも空きが目立つ状態になって閉まっています。郊外に行くとこの傾向は更に強まり、新しいビジネスビルの一階のテナントが埋まっていない状態です。昨年の時点でも台北市内の不動産利回りは1%を割り込む水準になっており、逆ざや状態になっていたので、弾けるのは時間の問題だと言われていました。台湾の場合、中国文化圏であり、中国人が親族を利用して購入していたという話がありましたので、中国バブルとその崩壊の影響を受けやすい環境にあったわけです。これからバブル崩壊の影響が顕著化するものと思われ、選挙後の政権交代による混乱がこれに拍車をかけないことを願います。 台湾の公務員問題 台湾で一番の社会保障問題は公務員の年金です。台湾は国民党による一党独裁の時代が長く、国民党と行政が一体化していたため、公務員天国だったわけです。そして、公務員年金の約束利回りは18% この利回りは先進国化で低成長時代に入った台湾で運用できる利回りではありません。この抜本的改革が必要なのですが、国民党だけでなく民進党も票を失いたくないためにこれに手を付けられないでいます。また、中高齢層と若年層の賃金格差も大きな問題になっています。台湾の平均初任給は2.2万元(1元約4円)程度で、それでも仕事が少ないとのことです。台湾の場合、特殊な技能職以外中国との比較になってしまうため、賃金が上がりにくい状況なのですね。サービス協定への反対運動はこのような状況が生み出したものです。… … …(記事全文2,066文字)
渡邉哲也の今世界で何が起きているのか
渡邉哲也(作家・経済評論家)