━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 渡邉哲也の今世界で何が起きているのか 2015/07/15 第967回 ギリシャの未来 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ギリシャ問題 本日の緊縮案法制化が焦点になります。現在のところ、法制化されるとの見通しですが、実際の採決が行われるまで不透明な部分もあります。そして、法制化されたあと、実際の救済に向けて話し合いが行われ得るわけですが、とりあえずつなぎ融資を行い、その後、本格的な救済案策定が行われるものと思われます。また、この救済案は実行プロセスに合わせた段階的支援処置になる公算が高く、再び、ギリシャ国内で反対意見が強まり、実現できなくなった場合、これが停止する可能性もあります。 そして、中長期的な本質的問題は、シリザの残したモラルハザードと銀行などの信頼低下だと思われます。低所得者層への差し押さえ禁止などにより、払えるのに払わない人が急増しており、税金も同様の状況になってしまっています。また、銀行に関しても、資本規制で預金することのリスクが明確化しており、ギリシャの銀行に対する国民の信頼は崩れています。資本規制を解除した場合、預金の解約などが相次ぐことが予測され、これがよりいっそう深刻な銀行危機を呼びこむことも予想されます。ギリシャの場合、ユーロ圏内でのヒト・モノ・カネの自由移動を認めたシェンゲン協定がありますので、他国に資産を移すのが合理的なのです。 確かに、景気が悪化する中でIMFが厳しい緊縮案を提示したことは間違いであったと思いますが、だからといって、公共事業の拡大などを行ったところで景気が単純に回復することは考えづらく、同時に他国はギリシャに対する不満を強めたことでしょう。本質的にはユーロを離脱し、シェンゲン条約を解消することで、国内資本を国内に留める努力をし、通貨安による事実上の通貨切り下げで国際的な競争力上昇を呼び込み、通貨安による債務削減を狙ったほうが良いとも割れます。ユーロ離脱に合わせ、一定のレートでドラクマ建てに切り替えてもらう。そして、市場によるドラクマの下落でそれが切り下げられるというプロセスを踏むのが良いと思われます。… … …(記事全文2,637文字)
渡邉哲也の今世界で何が起きているのか
渡邉哲也(作家・経済評論家)