Foomii(フーミー)

渡邉哲也の今世界で何が起きているのか

渡邉哲也(作家・経済評論家)

渡邉哲也

第257回 米国追加の量的緩和QE3実施 シャープ問題

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━     渡邉哲也の今世界で何が起きているのか     2012/09/14   第257回 米国追加の量的緩和QE3実施 シャープ問題 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★米国追加の量的緩和 QE3を実施   量的緩和をすると、市場の資金量が増えて、だぶついたお金が消費に回り、実体経済を 改善させ、雇用を底支えする。  また、通貨の希薄化(通貨量増大)により、通貨一単位あたりの価値が低下、それが通 貨安の要因となり、産業分野での国際競争力を引き上げる。  しかし、問題は通貨安による輸入物価の上昇であり、それが悪性インフレであるコスト プッシュインフレの要因となる。  本来、自国通貨と金融市場が閉鎖されていれば、追加で投入した資金がだぶつきを起し、 国内の資金循環を改善させるのだが、キャリートレードなど海外への流出も視野にいれる 必要があり、自由化の進む現代では、それだけでは効果が薄いという結果も出ている。  国内の雇用を改善させるには、この量的緩和資金の国内留保が重要であり、同時にそれ が国内の実体経済に回るように政策を打つことも重要となる。  米国の場合、これまでの過程で多くの製造業などが失われており、この回復は容易では ない。失われた製造業の代わりに発達したのが、金融であり、サービス業であるのだが、 これはなかなか安定した雇用の受け皿になりにくいのである。  輸入は雇用を奪う。新興国の安価な商品流入は国内の製造業に大きなダメージを与える 構造になっている。これまで先進国の多くは、これを金融による新興国投資の配当や金利 という形で補い、それを消費に当ててきた側面が強いが、金融の崩壊によりこの基本構造 は大きく変化しつつある。 ★シャープ問題  シャープ問題も米国の前例を見ればその本質が見えてくる。シャープの業績不振の原因 は、新興国による安価な商品との過当競争にあり、更に円高がこの問題に拍車をかけた形、 新興国の多くは先進国の技術を利用しているが、それに見合う適正な特許料などが払われ ているかといえば、不当な模倣が多いのも現実である。  全銀協会長が声明を出し、シャープを銀行団が救う方向に進んでいるが、これはこれま で進められてきた債券発行などによる直接金融拡大の危険性を表すものでもある。日本で も金融ビックバンにより、金融市場の開放が進められ、債券発行などによる市場での直接 金融が拡大されてきた。しかし、これは銀行と企業との関係を希薄にし、市場評価の影響 を受けやすくすることにもなる。  もう一度、これまで行われてきた自由化と規制緩和、市場開放が正しいのか、再検証と 改善が必要と成り始めているのではないだろうか?特に日本の場合、国内資本が充実して おり、資金調達を海外に頼る必要はない。国内の余剰資金をうまく回し、それが産業や雇 用に良い効果をもたらす構造を作るべきだと私は考える。 ■FOMC:量的緩和第3弾、MBS無期限購入-時間軸も延長 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAARP56S972M01.html 米連邦準備制度理事会(FRB)は12-13日に開催した連邦公開市場委員会(FOM C)終了後に声明を発表し、長期証券の保有を拡大する量的緩和第3弾(QE3)を実施 すると表明した。オープンエンド型の形式をとり、政府支援機関の住宅ローン担保証券 (MBS)を毎月400億ドル購入する。 FOMC声明はまた、「少なくとも2015年半ばまで」フェデラルファンド(FF)金利 の誘導目標をゼロから0.25%のレンジで据え置く可能性が高いことを明記した。1月以降、 FOMCは少なくとも2014年遅くまで超低金利を維持する方針を示していた。 ■FOMC声明(全文):住宅ローン担保証券を追加購入 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAAV7V6TTDYL01.html ■FOMC声明骨子:労働市場の改善までMBSの購入継続 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAAPEA6S972801.html ■オランダ国民は「反欧州」を選ばず、独判断に続きユーロに朗報 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MA946A6TTDSP01.html 12日投開票のオランダ総選挙では、自由民主党を率いるルッテ首相が勝利した。欧州債務 危機が2009年に始まって以来、ユーロ圏諸国で首班の座が維持されるのはエストニアのア ンシプ首相に続いて2人目だ。 ■IMF:ギリシャと協力、緊縮プログラムを正道に戻す必要 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAANJ16TTDUY01.html ■ギリシャ:4~6月失業率、23.6%に悪化-1~3月は22.6% http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAA8LS6JIJZV01.html ■ギリシャ2大労組、26日にゼネスト実施-政府の緊縮策に抗議 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAAELX6K513M01.html ■独財務相:スペインが追加救済要請なら「愚か「-新たな混乱警告 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAAPYE6JIK0D01.html ■欧州の銀行、制裁あってもイランとの取引続ける-米紙WSJ http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAA3T36TTDT601.html こうした取引は欧州連合(EU)による貿易制裁措置には抵触していない。EUの措置は 米国ほど厳しくないためだ。ただ一部の銀行アナリストや政府当局者は、米国の規制に照 らして問題が生じるリスクがあり、銀行の米市場へのアクセスが危うくなる恐れを指摘し ているという。 ●米生産者物価指数:8月は1.7%上昇、約3年ぶりの大幅な伸び http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAAGA76TTDSA01.html ●米新規失業保険申請件数:1.5万件増の38.2万件、予想上回る http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAAG926S972E01.html ■佐藤全銀協会長:シャープは「日本の産業構造の一部」協力へ http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MA9VHK0YHQ0W01.html ──────────────────昨日の市況───────────────── ■今日の国内市況(9月13日):株式、債券、為替市場 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAA0FT6JIJW501.html ●日本株は続伸、欧州懸念薄れ景気敏感買い、電力も堅調-午後様子見  東京株式相場は続伸。欧州債務問題への不安が薄れ、海運やガラス・土石製品、鉄鋼な ど景気敏感業種が買われた。値上げ申請観測が浮上した九州電力、関西電力が急騰するな ど電力株も高い。ただ、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を見極めたいとして様 子見姿勢も強く、午後はこう着した。  TOPIXの終値は前日比2.41ポイント(0.3%)高の744.23、日経平均株価は35円19 銭(0.4%)高の8995円15銭。 ●ドルが対円で7カ月ぶり安値、QE3期待-対ユーロは5月来安値圏  東京外国為替市場ではドルがじり安となり、対円で約7カ月ぶりの安値を付けた。海外 時間に注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表を控えて、量的緩和第3弾 (QE3)を期待したドル売りの流れが継続。ドルは対ユーロでも約4カ月ぶり安値をう かがう展開。  ドル・円相場は1ドル=77円90銭付近から一時、77円65銭と2月14日以来の水準までド ル安・円高が進行。午後3時33分現在は77円71銭前後となっている。 ■グローバル・ストックマーケット・サマリー【アジア・太平洋編】 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAAIPF6S972K01.html 【香港株式市況】  香港株式相場は下落。中国国営の新華社通信は論説記事で、大規模な刺激策は中国の持 続的な経済成長にとって「有害」だと指摘した。米連邦準備制度理事会(FRB)の政策 発表を控え、市場では様子見ムードが広がった。  ハンセン指数は前日比27.76ポイント(0.1%)安の20047.63で終了。一時は0.4%高ま で上げた。ハンセン中国企業株(H株)指数は0.1%安の9480.27で引けた。 【中国株式市況】  中国株式市場では、上海総合指数が約2週間ぶりの大幅安となった。中国国営の新華社 通信が大規模な刺激策は中国の持続的な経済成長にとって「有害」だと指摘し、政府によ る輸出企業支援策への期待が後退した。  上海証券取引所の人民元建てA株と外貨建てB株の両方に連動する上海総合指数は前日 比16.18ポイント(0.8%)安の2110.38と、先月29日以来の大幅安で引けた。上海、深?両 証取のA株に連動するCSI300指数は前日比0.9%安の2298.46で終了。 ■9月13日の海外株式・債券・為替・商品市場 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAB3W607SXKX01.html ◎NY外為:ドル下落、FOMCがQE3決定-対円7カ月ぶり安値  ニューヨーク外国為替市場では、ドルが主要通貨の大半に対して下落した。米連邦公開 市場委員会(FOMC)が量的緩和第3弾(QE3)の開始を決定したことを受け、ドル の価値劣化を懸念する売りが広がった。  ドルはユーロと円に対して軟調に推移した。対ユーロでは4カ月ぶり、対円では7カ月 ぶりの安値に下落した。FOMCは13日の会合後に声明を発表し、長期証券の保有を拡大 する量的緩和第3弾(QE3)を実施すると表明。オープンエンド型の形式をとり、政府 支援機関の住宅ローン担保証券(MBS)を毎月400億ドル購入する。  ニューヨーク時間午後2時44分現在、ドルは円に対して前日比0.5%安の1ドル=77円4 7銭。一時0.9%下げ、2月9日以来の安値を付けた。対ユーロでは0.7%下落して1ユー ロ=1.2992ドル。ユーロは円に対して0.2%高の1ユーロ=100円66銭となっている。 ◎米国株:上昇、FOMCが景気浮揚に向け追加緩和策を発表  米株式相場は上昇。米連邦公開市場委員会(FOMC)が景気浮揚に向け住宅ローン担 保証券(MBS)の購入を発表したことが材料視された。  ニューヨーク時間午後4時過ぎの暫定値では、S&P500種株価指数は前日比23.43ポイ ント(1.6%)高の1459.99。ダウ工業株30種平均は206.51ドル(1.6%)上昇し13539.86 ドル。 ◎欧州株:反落、FOMC控え-統合協議中のEADSとBAE大幅安  13日の欧州株式相場は反落。ストックス欧州600指数は前日の約1年2カ月ぶり高値か ら下落した。米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表を控え、様子見姿勢が広がっ た。  統合を協議中の航空宇宙・防衛関連企業EADSと英BAEシステムズが大幅安。両銘 柄の保有を短期的に減らすことをバークレイズが投資家に勧めたことが材料。一方、仏航 空機器メーカーのゾディアック・エアロスペースは2.1%高。ソシエテ・ジェネラルが投 資判断を引き上げた。  ストックス欧州600指数は前日比0.2%安の272.42で終了。一時は0.6%下げた。前日は ドイツの連邦憲法裁判所が恒久的救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM)の批准 を承認し、2011年7月以来の高値となっていた。 ◎欧州債:スペイン2年債下落、救済要請先送りの見方-英国債上昇  13日の欧州債市場では、2年債を中心にスペイン債が下落。同国政府が金融支援の要請 を先送りするとの見方から、欧州中央銀行(ECB)によるスペイン債購入の期待が後退 した。  ドイツ10年債は値上がりし、利回りは約10週ぶり高水準から低下した。格付け会社フィ ッチ・レーティングスがこの日、スペインのカタルーニャ自治州の格付けをジャンク級 (投機的格付け)に引き下げる可能性を示唆したこともスペイン債の売りにつながった。 イタリアがこの日実施した入札では、3年債の落札利回りがほぼ2年で最低。これを受け、 流通市場では2年債が下げ幅を縮めた。  ロンドン時間午後4時12分現在、スペイン2年債利回りは前日比13ベーシスポイント (bp、1bp=0.01%)上昇の2.95%。ユーロ導入以降の最高は7月25日に付けた7.14 7%。同銘柄(表面利率4.75%、2014年7月償還)の価格は0.235下げ103.21。スペイン10 年債利回りは1bp上昇の5.64%。  イタリアの2年債利回りは7bp上昇の2.26%。一時は2.29%まで上昇した。同国政府 は3年債40億ユーロ相当を発行、平均落札利回りは2.75%と、7月13日の入札での4.65% から低下した。 ────────────────────────────────────────            著者:渡邉哲也(作家・経済評論家)         ホームページ:http://www.watanabetetsuya.info/          Twitter:http://twitter.com/daitojimari    メールアドレス:info@watanabetetsuya.info ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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