□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2018年8月11日第550号 ■ ============================================================= 米朝非核化交渉の行方を見事に解説してくれた金基正教授 ============================================================= 米朝非核化交渉がもたついている。 その理由は、トップダウンで合意された北朝鮮の非核化と体制保証のディールが、その具体的プロセスについて実務者レベルに委ねられることになったからだ。 果たしてこのまま朝鮮半島情勢は平和に向かって進むのか、それとも再び後退するのか。 私は楽観的だ。 しかし、いくら私がそう思う理由を書き連ねても説得力はない。 そう思っていたら私の言いたい事を見事に代弁してくれた人物を見つけた。 8月8日の朝日新聞が金基正(キムギジョン)延世大学教授のインタビュー記事を掲載していた。 金教授は過去2回の大統領選挙で文在寅氏の外交・安保政策ブレーンを務めた国際政治学者だという。 その金氏が語る言葉のすべてをここで書く余裕はない。 しかし、次の言葉を紹介するだけで十分だ。 彼は言う。 私は「意図的に楽観」していると。 その意図はこうだ。 悲観的に考えると対話の活力を失う。緊張の局面に戻さないためにも楽観論に立つべきだ。多少のアップダウンがあるのはやむを得ないが、大事なことは合意の軌道から外れないことだと。 その通りである。 そして彼は米朝の間で何が引っかかっているのかという問いに対してこう語っている。 ひとつは言葉の問題である。米国が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」は敗戦国に対して使う言葉だと。北朝鮮は、非核化に同意しても、この言葉は決して認めないと。 そうなのである。米国は北朝鮮を見下してはならないのだ。 そしてこの言葉は、いまや米国は使わなくなった。 いま北朝鮮をめぐって起きている対話の流れをどう見るか。 こういう質問に対し、金氏はこう語っている。 歴史的大転換が起きましたと。 そしてトップ同士が先に大枠を決め、解決の意思と目標を示したことが重要だったのだと。 そしてこう続ける。 「米朝はこれから、2か月に1度くらい、周囲の耳目を集める政治的なショータイムを見せるでしょう。トランプ大統領のスタイルがそうだし、北もそれをよくわかっている。当面の注目は9月の国連総会」だと。 このインタビューで最も重要なテーマである、朝鮮半島の平和づくりと、日本の役割について、金氏はこう語っている。 平和体制作りは非核化の実現の可否を決定づける重要な制度的装置である。だからこそ休戦状態を終戦状態にし、次に平和協定を結んで戦争の余地をなくさなけてはいけないと。 そして平和協定は米朝韓に加えて中国との4者で結ぶべきだと。 そしてその後に日朝、米朝の国交正常化につなげる。そうしてこそ平和の完成度が高まると。 きわめつけは日本の役割について語っているところだ。 金氏は次のように語っている。 朝鮮半島和平のために日本の役割は重要だと。 平和協定に日本が参加しない選択はないと。 そう言った後で、金氏はこう締めくくっている。 日朝の国交樹立は、平和体制作りの長い過程の大切な最後を彩ることになると。 これは安倍首相に対する痛烈な批判だ。 外交・安保政策について金基正教授のようなブレーンを持つ文在寅大統領は恵まれている。 金基正教授のようなブレーンを持たない安倍首相は不幸である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)