□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2018月4月8日262号 ■ ============================================================= イラク自衛隊派遣違憲判決の裏で下されたもう一つの判決 ============================================================= 東京新聞の青山元名古屋高裁裁判長のインタビュー記事の中で、青山裁判長はこう語っていた。 「一般市民である原告は直接被害を受けていない。これが判決の論理だった」と。 この言葉の意味するところはこうだ。 原告の訴えは平和的生存権をおかされた事による損害賠償訴訟だった。 しかし、青山裁判長は平和的生存権の侵害を理由に訴える事は認めたものの、自衛隊のイラク派遣によって平和的生存権が侵害されたとまでは認められなかったとして、損害賠償請求を棄却した。 つまり裁判の主文に書かれている判決は原告の敗訴だったのだ。 だからこそ当時の福田康夫首相は、この判決を「傍論」による違憲判決だと無視を決め込んだのだ。 実際のところ、当時イラク自衛隊派遣訴訟は全国至るところで起きていた。 そしてそのすべてが、原告には訴えるべき利益がないとして門前払い(却下)されていた。 それではなぜ名古屋高裁だけが控訴を受け入れたのか。 それは3000人に及ぶ名古屋のイラク自衛隊派遣訴訟の原告の中で唯一人、私が、イラク戦争に反対して外務省を解雇された疑いがあったからだ。 まさしくその疑義を裁判所は審理しなければいけないのだ。 私にはその認識はまったくなかったが、実際のところ、名古屋高裁の審理は、途中から、一般原告の平和的生存権訴訟と、私一人の不当解雇の有無についての二本立てで行われた。 もし私が名古屋のイラク訴訟の原告のひとりに加わっていなければ、あるいは名古屋高裁も門前払いの判決を下したかも知れなかったのだ。 その意味で私は歴史的な「青山判決」の実現に貢献したのではないかと密かに自負している。 因みに私は最後の陳述で青山裁判長の目を見つめながら訴えた。 裁判官も官僚である以上、解雇された私の心中を理解していただけると思うと。 その時一瞬、青山裁判長と心が通じ合えた気がした。 それから何日か経って、青山裁判長は判決の中でこう述べた。 解雇は不当だったとまでは言えないが無念の気持ちは理解できると。 この言葉を聞いて私は救われた。 私はきょうまで活動を続けらる勇気を青山裁判長からもらったのである(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)