□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2018月1月11日第34号 ■ ============================================================== 最後までいいとこどりする小泉元首相 ============================================================== 小泉純一郎という、戦後の日本政治史上稀代のトリックスターがその権力の絶頂の時、私はその小泉首相が米国のイラク攻撃を世界に先駆けて真っ先に支持したことを批判した。 個人的な批判ではない。 天皇陛下から認証され、日本外交の全権を委任されたレバノン駐箚特命全権大使として、現地で得た情報をもとに、なぜそれが間違っているかを明記した上で意見具申したのだ。 それから数日後、私は見事に、小泉首相の激怒を「忖度」した2年先輩の竹内外務次官(当時)に職を解かれることになった。 権力に楯突きたかったら組織の外に出て、自由の身になった好きなようにやればいい、そのほうが君のためだ、そう思って辞めてもらう事にした、と捨て台詞を浴びせられて。 以来私は小泉首相の政策を批判し続けて来た。 私怨ではない。 小泉首相の政策が間違っているからだ。 よほど頭に来たのだろう。 そのような経緯を全く知らない人がたまたま小泉首相と会って私の話をした時、「俺の前でアマキの名前を出すな」と小泉首相が激怒したという。 そのことを人づてに聞いた。 その私が、小泉首相が脱原発を言い出した時、それを大いに歓迎し、小泉脱原発の支援者である河合弁護士を日比谷の事務所に訪れて、ぜひ小泉首相に会わせて欲しい、過去の批判を土下座して詫びた上で、エールを送りたい、というメッセージを伝えたいとお願いした。 何事も行動の早い河合弁護士だ。 そのメッセージはそのまま小泉首相に伝えられた。 しかし、今日までなしのつぶてだ。 そして、きのう小泉首相は記者会見を開いて原発ゼロ法案を発表した。 小泉首相が本気で脱原発実現の先頭に立つなら私は土下座して評価する。 しかし、小泉首相は記者会見の冒頭で「安倍政権では実現困難」とわざわざ前置きした。 正体見たりだ。 脱原発法案は、安倍政権の時に成立させてこそ意味があるのだ。 日本が早晩脱原発に向かうのは、もはや歴史の流れだ。 誰でもできる。 いずれそうなる。 安倍政権に脱原発をさせてこそ小泉首相の役割がある。 小泉首相の利用価値がある。 そして、小泉首相がいま安倍首相にさせることは、脱原発の他にも重要な事がある。 それは沖縄問題と北朝鮮問題だ。 日米不平等条約の改正であり、拉致問題の解決を含めた日朝国交正常化である。 その事に目をつむったまま、いずれそうなる脱原発の先頭に立とうとしている。 これはいいとこどりだ。 しかも、それだけではない。 政局を先取りした動きだ。 おりから野党は全滅だ。 自民党もポスト安倍がいない。 脱原発を掲げて野党共闘のガスを抜き、ポスト安倍の自民党に脱原発法案に舵を切らせ、野党の付け入るスキを与えない。 小泉首相は究極の自民党擁護者であり、徹底した共産党嫌いだ。 その小泉首相が脱原発の先頭に立って野党共闘が後に続く。 そしてポスト安倍の自民党がその法案を取り込んで与野党合意の脱原発法案を成立させる。 自民党政権は安泰だ。 そしていつの日か、自民党永久政権の下で進次郎への禅譲を実現する。 いかにも自ら公言している親ばか小泉首相が考えそうなことだ。 私は小泉首相に土下座しなくて済みそうだ。 私は再び小泉批判の先頭に立つことになるだろう。 日本をここまで悪くした元凶は小泉首相だと。 対米従属を進め、格差社会をつくり、憲法9条を否定し、国会審議を空疎にし、拉致問題を中途半端な形で投げ出し、何よりも安倍首相を産み落とした張本人は小泉首相だと。 脱原発ひとつでこれらを帳消しにされてはたまらないと。 こんな小泉首相の脱原発に立憲民主党や共産党がすり寄るなら、自らの行き詰まりを証明しているようなものだ。 小泉首相のいいとこどりを助けているようなものだ。 真面目に脱原発を訴え、努力して死んでいった者たちが浮かばれない(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)