□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年3月1日第190号 ■ ============================================================== 90歳になって野党に転じるマハティール氏の政治家魂 ============================================================== 私の35年間の外交官人生で出会った世界の指導者は数多いが、その中で最も印象的な指導者を挙げろといわれたら、ためらいなく私は南アフリカのネルソン・マンデラ大統領とマレーシアのマハティール首相を挙げる。 マンデラ氏については説明は不要だろう。世界の認める指導者だ。 その一方でマハティール氏については意見が分かれる。 豪州のホーク首相に始まり、英国のサッチャー首相、米国のレーガン大統領におよび、次々とアングロサクソンの傲慢さにかみつき、シンガポールのリーカンユー大統領、インドネシアのスハルト大統領などのアジアのライバルに対してさえ、政策において異なれば忌憚なく反論する。 その攻撃性は反発も招くが、その政治家魂に私は圧倒された。 そのマハティール首相が好意的だったのが日本だ。 権力の絶頂にあったとき、東アジア共同体構想を提唱し、日本にアジアの指導国たれとエールを送った。 私が在マレーシア日本大使館の公使であった1990年初めの頃だ。 おそらく日本の外交史上で最初で最後であろうこの本物のラブコールに対して、日本がとった外交は、明言を避けた不誠実な外交だった。 その呼びかけに応じたいのはやまやまだが、米国の反対には逆らえない。 私にとっては忘れられない日本の対米従属の姿がそこにあった。 その時から二十数年たって、そのマハティール氏を久しぶりにきょう3月1日の日経新聞に見つけた。 もう90歳だという。 対立するナジブ首相への抵抗姿勢を示し、ついに2月29日に与党を離党したと発表したという。 与党支持者に、後に続けと呼びかけたという。 ナジブ首相は1990年当時、マハティール首相に青年・スポーツ大臣に抜擢され、そこから、後継者の一人として育った政治家の一人だ。 マハティール氏にしてみれば子供のようなものだ。 そのナジブ首相はいまでは最高権力者だ。 しかしその最高権力者が自らの信念に反した時、22年も首相を務めた与党を離れ、90歳になっても野党に下野して闘う。 そこに政治家マハティール氏の反骨魂を見る思いである(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)