Foomii(フーミー)

天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

防衛官僚の沖縄暴言をオフレコ取材の是非論にすりかえてはいけない 
無料記事

□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年12月1日第842号 ■     =============================================================  防衛官僚の沖縄暴言をオフレコ取材の是非論にすりかえてはいけない                                           ============================================================  12月1日の東京新聞「ニュースの追跡」は、防衛局長の暴言は オフレコ懇談の場で出た発言だとして、オフレコ取材の報道の是非に ついて論じている。  「オフレコの内容は一切報道すべきでない。発言を報じたのはルール 違反だ」と言い切る田原総一朗のような者もいれば、「発言内容次第で はオフレコ破りは当然だ」(大石泰彦青山大学教授―メディア論)と いう者もいる。  結論から言えば後者が正しい。  そもそもオフレコ懇談ができた背景には、情報源である権力側 (政治家、官僚)の記者に対するサービスという面がある。  すなわち政府の政策に関し何も語らない、語っても杓子定規な発言を 繰り返すだけでは記事にならない。  そこで婉曲的にヒントを与えて記者に一歩踏み込んだ記事が書ける ようにさせてやるのだ。  もちろん権力側にも思惑がある。発表できないけれど書かせたいこと もある。それを記者の責任で書かせて権力側の都合のいいように世論を 誘導したり、世論の出方を見極める。  そのためには漏れるリスクを犯してヒントを与える。  すなわちオフレコ懇談は権力側と取材側の真剣な駆け引きの場なの である。  しかしその駆け引きの内容は、あくまでも政策にかかわる情報なの である。  その情報が出てしまったために政策がうまく進められなくなったり、 外交の相手国に迷惑をかけることもある。  この場合は記者との信頼関係が崩れたりする。  しかし、政策に関する情報の秘匿や漏洩は、そのリスクを犯した上で どちらも懇談に臨むのだ。  ところが今回の防衛官僚の暴言は政策に関する情報漏洩とは無関係 な軽率発言だ。防衛官僚と記者たちとの馴れ合いがもたらした緩んだ 失言だ。  しかも今度の防衛官僚の発言に関しては言語道断の発言だ。  それはオフレコ懇談のルールを破ったかどうかといった類の話では ない。  その発言は当然国民に知らせなければならないし、発言者は責任を 取らなければならない発言だ。  それをオフレコ取材の是非にすりかえてはいけないのである。  しかし、私がこのメルマガで言いたい事はその事ではない。  今度の発言事件で私があきれ果てたのは、大手マスコミがこの暴言を 黙殺しようとしていたことだ。  私は12月1日の日刊ゲンダイの記事を読むまでは気づかなかった。  そのゲンダイの記事はこう書いてる。  そのオフレコ懇談には朝日、読売、NHKなど計9社のマスコミの 記者が出席していたが、いずれもこの暴言を報じようとしなかった という。  ただ一人琉球新報のみが翌日(11月29日)の朝刊で報じた。  それをきっかけに騒ぎが大きくなってから在京メディアが後追い 報道する始末だったというのだ。  そういえば発言が28日の夜だったのに大手メディアが騒ぎ始めた のは29日の午後だった。  しかもわざわざ「非公式の懇談会」、「オフレコ発言」を強調し、 その発言を知っていながらすぐに書かなかった言い訳をしている。  私はここに今の大手メディアのダメさ加減を見る思いだ。  ダメさ加減とはどういうことか。  それは、たとえオフレコ懇談であっても権力者の暴言は「国民の 知る権利」を優先して書かなければならないというジャーナリズム精神 を忘れてしまったことだ。  あるいは取材源を怒らせたら、次からはネタをもらえないと考えて 書かなかっただらしなさだ。  ひょっとして、この暴言が表に出ると普天間移設問題に悪影響が 出ると考えての政府側に立った手心だったのかもしれない。  そうだとすればメディアの死だ。  そういえばこの問題を報じた29日夜のNHKニュースウオッチ9 で大越健介キャスターは、残念だ、残念だ、とくりかえしていた。  私には、それが政府・外務省の気持ちを代弁しているように聞こえて 仕方がなかったのである。                              了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2024年のバックナンバー

2023年のバックナンバー

2022年のバックナンバー

2021年のバックナンバー

2020年のバックナンバー

2019年のバックナンバー

2018年のバックナンバー

2017年のバックナンバー

2016年のバックナンバー

2015年のバックナンバー

2014年のバックナンバー

2013年のバックナンバー

2012年のバックナンバー

2011年のバックナンバー

2010年のバックナンバー

2009年のバックナンバー

このマガジンを読んでいる人はこんな本をチェックしています

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2024年5月19日に利用を開始した場合、2024年5月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2024年6月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、ドコモケータイ払い、auかんたん決済をご利用いただけます。

クレジットカードでの購読の場合、次のカードブランドが利用できます。

VISA Master JCB AMEX

銀行振込では、振込先(弊社口座)は次の銀行になります。

銀行振込での購読の場合、振込先(弊社口座)は以下の銀行になります。

ゆうちょ銀行 楽天銀行

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する