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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

アフガンに自衛隊を派遣するとは狂気の沙汰だ
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月6日発行第181号 ■       ===============================================================           アフガンに自衛隊を派遣するとは狂気の沙汰だ     ===============================================================  尖閣ビデオ流出事件でメディアは大騒ぎだ。メディアは商売繁盛でさぞ 嬉しい事だろう。  そういう時はヘソ曲がりの私は他の事に注目することにする。  11月6日の読売新聞が、政府が自衛隊医官ら10人を年内にもアフガン に派遣する検討を始めたというスクープ記事を掲載していた。  もっともこのニュースは、私の手元にあるファイルでは既に10月15日の 栃木県下野新聞に掲載されていた。  通信社の配信を地方紙が掲載したのだからおそらく他の地方紙にも同様の 記事が掲載されていた事だろう。  だから唐突に出てきた話ではない。従来から検討されてきた事である。  しかしその報道以来、私は注意して見てきたが、どの大手新聞もこの事に ついて取り上げた気配はなかった。  そして今日の読売の記事である。  この記事を見て私は、かつて読んだもう一つの記事を即座に思い起こした。  それはやはり10月15日に、産経新聞がカブール発共同として書いていた 一段の小さな記事だ。  それはアフガンに派遣されている国際治安支援部隊(ISAF)の駐留基地 で10月13日、反政府武装勢力タリバンによる自爆攻撃があった、という 記事だ。  それだけでは私は驚きはしなかった。私が注目したのは国際治安支援部隊の 基地に日本政府が派遣した文民2人がいたが、死傷者はなかった、とその記事 が報じていたことである。  この記事を読んだ時、私は思った。  これは日本政府にとって不幸中の幸いだ。もし日本政府が派遣した文民がテロ の犠牲になっていたら大騒ぎになった事だろう。  その時はじめて国民は気づく事になっただろう。政府が国民の知らない間に テロとの戦いのため戦地に日本人を送り込んでいたということを、と。  なぜ文民が派遣されていたのか。それは国際治安支援部隊の一部に地方復興 チーム(PRT)というのがあって、そこに文民が派遣されていたからだ。  しかし戦闘部隊の一部が復興支援部隊であるというのはごまかしだ。  日本はあくまでも復興支援に協力するのだというアリバイづくりに過ぎない。  アフガンは戦地である。アフガンへの支援は、復興支援といえども戦争と一体 の協力であることには変わりはない。  ただでさえ疑義のある日本のアフガン支援であるのに、今度の報道は自衛隊の 派遣である。たとえ医官、看護官といえども立派な自衛隊員だ。アフガンは誰も 否定できない戦場だ。ついに戦地に自衛官が派遣されるのだ。  こんな事が議論も無く行われていいのだろうか。  おりしも菅民主党政権が直面する問題は山積している。  閣内は分裂し、菅首相の指導力は皆無だ。  このような中でまともな政治的決断などできる筈はない。  政治的指導力のないままに、国際貢献業務の拡大に野心的な防衛官僚と、対米 従属しか念頭にない外務官僚が、どんどんと政策を進めていく。日本は危うい。  読売新聞の記事がまたふるっている。  APECで来日するオバマ大統領との日米首脳会談に向け、「日米同盟 立て直し」が急がれる中で首脳会談の成果にできるようなテーマがない。 そこで考え出されたのがこれだ、という。  だから今回の派遣は急ぐ必要がある。法改正や新法制定は行なわず、防衛省 設置法で自衛官の任務と定める「教育訓練」として実施する。現地の医療機関 で教育訓練の講師として活躍させる、という。  憲法違反とされる「武力行使との一体化」という批判を避けるため、アフガン に展開している国際治安支援部隊(ISAF)とは別個に活動する、と。  目もくらむような官僚の浅知恵だ。  こんな協力を誰が期待しているというのか。  肝心の米国さえも関心はないだろう。  米国が唯一歓迎するとすれば、アフガンを占領しているのは米国だけではない、 日本も参加している国際有志連合の総意だ、という言い訳ができるという事だ。  あのイラク攻撃で日本の支援が米国の孤立化を防いだ事の再現だ。  しかしアフガンのテロ鎮圧作戦はもはや成功しようのない戦いだ。  それどころか、今日(11月6日)の報道を見ていると、パキスタンでも、 そして米軍が撤退しようとしているイラクでも、自爆テロが起きている。  菅民主党政権は小泉政権よりはるかに大きな過ちを犯そうとしている。                                了                              

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