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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

安倍元首相の秘書官が語った拉致問題の解決策
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年7月29日発行 第38号 ■        ===============================================================          安倍元首相の井上秘書官が語った拉致問題の解決策                                           ================================================================   金元工作員の来日をめぐる報道で各紙が埋め尽くされていた時、産経新聞が 極めて重要なインタビュー記事を掲載していた。  すなわち7月26日の産経新聞は安倍元首相の秘書官であった井上義行氏が 語る対北朝鮮秘密交渉の舞台裏をスクープ報道した。  正体のわからないミスターZなる人物を相手に、安倍官房副長官と中山恭子 内閣官房参与、谷内正太郎内閣官房副長官補佐(後外務事務次官)の4人だけ で極秘プロジェクトを行なっていたという。  およそ外交に素人の井上秘書官を二度にわたって極秘訪朝させていたという。  そんな安倍元首相のセンスにはあきれるほかは無い。そんな安倍元首相に 拉致問題を任せて逃げた小泉純一郎元首相の無責任さに驚く。しかし、ここでは それは問わない。  それから、私は義行という秘書官を責めるつもりもない。彼もまた愚かな 政治家の犠牲者なのかもしれないからだ。  ここで私が声を大にして言いたいのは、井上氏が語った言葉の中に、拉致問題 解決の本質があるということである。  井上氏は言う。 ミスターZは井上氏との極秘交渉の中で平壌宣言の経済協力の中には慰安婦問題 も入っていると言って来た、という。そしてこれは私(井上)のレベルを超える 内容だったので(帰国して日本の)外務省と話すしかない、と答えたという。  井上氏は言う。  ミスターZは、公式には「拉致問題は解決済み」としていた北朝鮮であるにも かかわらず、「拉致とはどこまでの範囲を指すのか」、「あと何人出せば解決 した事になるのか」と聞いてきた、と。  これに対し、井上氏は「特定失踪者も入る」と応じてみたものの、自分には 安倍首相を代理して責任を持って文書に署名できる権限はなかった、と。  井上氏は言う。  2006年10月の北朝鮮による核実験で交渉は複雑になったが・・・07年 7月の参院選後に再交渉することでミスターZと合意していた、と。  そして参院選で安倍自民党が勝利していれば拉致被害者は間違いなく帰って きた、なぜならば拉致被害者を帰国させれば国交正常化までいくわけだから (それほど北朝鮮は国交正常化を望んでいた)、と。  極めつけは井上氏がインタビューの最後に語った次の言葉だ。 「核やミサイルなどいろんな問題があるなかで拉致問題の比重をどう考えるか、 時の首相はいつか決断しなければならない。場合によっては、首相辞任も考え なければならない。被害者全員を帰国させたらそれで辞任をしてもいいという 覚悟を持ってやらないと向こうは動かないだろう。北朝鮮はそれを見ている と思う」  これらの井上氏の発言の中に、私は拉致問題解決の本質を見る。  すなわち拉致問題の解決は日朝国家正常化と同時に解決するほかはなく、 日朝国交正常化のためには日本の北朝鮮に対する過去の問題の清算が避けられ ないということである。  逆に言えば日本がその問題に誠意を持って対応するならば北朝鮮は拉致問題 で譲歩をする用意があるということだ。それを北朝鮮は何度も井上氏に示唆 してきたのだ。  しかし日本の指導者はそのような解決策を取ろうとしなかった。対北朝鮮強硬策に終始してきた。なぜか。  それは北朝鮮の核問題の解決を最重要視する米国に従属するあまり北朝鮮に 強硬にならざるを得ないからだ。  北朝鮮撃つべしとする国内の愛国、右翼に配慮して、日本の過去の過ちを 潔く認め、国交正常化を進めようとする事が出来ないからだ。  米国や国内右翼勢力を敵に回してまで拉致問題解決を優先する事は、政治 生命はおろか文字通り命を賭す事なのだ。  その覚悟がなければ如何なる首相にも拉致問題は解決できない。  井上義行氏はそう言っているのだ。  井上義行氏が何気なく暴露した次の言葉がそれを物語っている。  「(二度にわたる極秘訪朝の)経費は中山氏(中山恭子拉致問題担当内閣参与) と私のポケットマネー。妻には怒られた(笑)」  なぜポケットマネーなのか。なぜ官房機密費を使わなかったのか。  それは責任逃れのためだ。安倍、小泉元首相には覚悟がなかったということだ。  いや今の日本の政治家を見ていると誰が首相になっても拉致問題は正しく解決 できそうもない。  そう気づいた時、中井国家公安委員長のパフォーマンスが妙に納得できるよう な気になってきた。  それを菅直人首相がさかんに褒めていたわけがわかるような気がする。  それが精一杯だという事だ。                                 了                                                                               ◎メルマガにする問い合わせは、info@foomii.com へ直接ご連絡願います◎    おしらせ                                                                           「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの 特別参加を得て次の要領で行ないます。  13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」  14:05-14:45 森田実 「特別講演」         休憩  15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木)  16:00-17:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日)    午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール    港区赤坂4-18-13    地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分    大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅  4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp                 ユー12ユー9エルオー6)             

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